東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo
東京大学 The University of Tokyo
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建築のみで完結することなく、建築を使用しない屋外でもなく。テント芝居において、空間は所詮区切られた土地でしかないが、芝居が始まれば密度は100%以上となる。一夜にして忽然と分離した、しかしそれ単体では空虚・不完全な空間。ここから断層と洞窟のイメージが想起された。
一枚の紙に切れ目を入れ歪ませた形状は大地の褶曲がモデル。屋根は地平に溶け込む曲線を描き、その上部には周辺の延長として植樹などをする。褶曲に絶えられず断層化した部分を入口とする内部は、入り組んだ洞窟構造をしており動線は定まらない。
例えば恐竜化石の欠片など、それがもたらす想像の喜びをも固有の価値とすると、不完全であることが価値を生むことが認められる。さらに忽然と姿を現した不完全空間は、このような「断片」的なモノがあって初めて場としての価値を持つのではないか。評価の定まっていない画人や制作時期不詳の作品と相性がいい。


忽然的ミュージアム


文学部歴史文化学科美術史学専修課程4年  今井悠也