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    ミナミコアリクイ。頭骨、下顎、全長120mm

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    ゴマフアザラシ。頭骨、下顎、全長220mm

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    ニワトリ。インギー品種、頭骨、全長70mm

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    アルパカ。剥製、肩高850 mm

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    キリン、キクタカ。頭骨(一部を切断・分離)

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    キリン、キクタカ。中手骨、全長700mm

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    キリン、キクタカ。頸椎列

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E9
動物園動物の第二の生涯
最前線の標本群

今日、動物園で死亡した動物の死体は、身体の進化史や生命を支えるメカニズムを解明することに測り知れない貢献を見せている。

千葉市動物公園から当館に譲られたのはミナミコアリクイ(Tamandua tetradactyla)である。アリクイ類の顎は特殊化した咀嚼メカニズムを備えていることで注目されてきた。歯が一本も無いために噛むことはなく、代わりに顎を内外側に開閉している。顎の開きに同期して舌を長く伸ばし、アリ・シロアリを食塊として食道に送り込む動作を繰り返している。知見の多くは数少ないオオアリクイに基づくもので、今後アリ食適応における咀嚼メカニズムの一般的理論化が期待される。このミナミコアリクイの骨格標本は、まさにアリ食適応の実態を解明する重要な鍵となろう。

ゴマフアザラシ(Phoca largha)の骨格は三重県の水族館、二見シーパラダイスで死亡した個体のものである。当館はアザラシ類とアシカ類が遊泳時に前後肢をどのように動かしているかという研究を重ねてきた。この個体は、他のアザラシやアシカの骨格と比較され、鰭の運動パターンの解析に用いられてきた。

インギー種は、イギリスとの交易にまつわる渡来史をもつニワトリ(Gallus gallus domesticus)として知られている。1894年に遭難し種子島に漂着した英国帆船から、救助の御礼として贈られた積み荷のニワトリが起源とされる。当館はインギーの死体を鹿児島市平川動物公園から譲り受け、骨格標本として研究と教育に用いている。現在、CTスキャンを用いて、品種の形態特性の解析が進められている。

このアルパカ(Vicugna pacos)の剥製は、動物園で死亡した個体から制作された。日本人にはなじみの薄い南米のラクダ科であり、毛皮標本を国内で見ることは希である。この標本は体毛が十分に伸びていない時期のものであるが、家畜品種の多様化を伝える貴重な剥製である。

キリン(Giraffa camelopardalis)の骨は、かつて東京都多摩動物公園で飼われていたキクタカという雄のものである。元々は野生個体であったものを、1971年から1985年まで飼育、死後東京農業大学に寄贈されて、骨格標本がつくられた。長く同大学で教育に活躍し、後年当館に譲られた。(遠藤秀紀・楠見 繭)