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カメラ、好奇心を追う
遠藤教授の部屋、熱狂を切り取って

UMUTオープンラボの動物標本には大量の動画作品が用意されている。これらは、世の表現無き博物館に“納品”されてきた展示解説映像とは、何らの共通点もない。普通のディレクターや普通の展示制作代理業が拵える普通の動画表現では、学問の生の現場を伝えることは困難である。ゆえに、私は、真に私の所業を映像にできる創作者とだけ動画を撮った。彼の名は喜多村 武という。

喜多村氏の作品は、学者たる私の人生をつねに鋭く抉り取っている。映像を抱え込んだUMUTオープンラボは、必ずや学者の足跡が、熱や痛みや臭いや不潔さを抜きには語れないことをも示すはずだ。ルール通りに消毒液が撒かれ、ルール通りに言葉が狩られ、ルール通りに説明責任を果たす場所は、永遠にUMUTオープンラボとは相容れない。だが、喜多村氏が学者の真の姿を捉えようとするとき、映像は知に飢える人間の熱狂を伝え始める。そして、映像はUMUTオープンラボを創り上げる。

動画作品はいつまでも制作が続けられ、50本、100本と歩みを重ねていくことだろう。そのそれぞれが、学者と知との対話を捉えている。何度も何度も博物館に足を運んでいただきたい。喜多村氏の作品は、これからも知の無限の広がりを追い続ける。(遠藤秀紀)