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    ミドリシャミセンガイ(Lingula anatina)。奄美大島笠利湾、 Yi-Jyun Luo博士・竹内 猛博士(沖縄科学技術大学院大学) 寄贈 (UMUT RB32352)

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    アコヤガイ (Pinctada fucata)。三重県志摩、竹内 猛博士(沖縄科学技術大学院大学) 寄贈(UMUT RM32351)

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貝類と腕足動物のゲノム解読標本

1990年代に様々な生物でゲノム解読が始められ、ヒトゲノムプロジェクトが完成したのは2003年であった。その後、様々なモデル生物でゲノムが解読されてきたが、海産無脊椎動物での解読は一部の生物に限られていた。

貝類でゲノムを解読する試みはいくつかのグループで行われていたが、最初にドラフトシーケンスが発表されたのはアコヤガイである(Takeuchi et al. 2012)。同じ年の半年後にはマガキのゲノム解読が発表され(Zhang et al. 2012)、2012年は貝類のゲノム研究の幕開けとなった年である。その翌年、2013年にはアコヤガイのゲノムの詳細についての論文12編がZoological Science誌に発表された(Endo & Takeuchi 2013ほか)。その後2015年にはタコのゲノム配列が解読された(lbertin et al. 2015)。

腕足類では2015年に最初のゲノムデータがミドリシャミセンガイで発表された(Luo et al. 2015)。この研究のデータから明らかになったことは、(1)腕足類の動物における系統上の位置には様々な説があったが、多数遺伝子を用いた系統解析の結果、腕足動物は環形動物より軟体動物に近縁であることが分かった。(2)シャミセンガイ類は脊椎動物の骨格と同様にリン酸カルシウムの貝殻を持つが、脊椎動物の骨形成に関与する遺伝子を欠いており、リン酸カルシウムを独立に獲得したものと考えられる、(3)腕足類の殻形成遺伝子には軟体動物と共通するものがあるが、腕足類で独自性を獲得している。展示標本はゲノムを抽出した個体であり、重要な研究の証拠標本である。(佐々木猛智)

参考文献 References

Takeuchi, T. et al. (2012) Draft genome of the pearl oyster Pinctada fucata: a platform for understanding bivalve biology. DNA Research 19: 117–130.

Endo, K. & Takeuchi, T. (2013) Annotation of the Pearl Oyster Genome. Zoological Sicence 30: 779–780.

Luo, Y.-J. et al. (2015) The Lingula genome provides insights into brachiopod evolution and the origin of phosphate biomineralization. Nature Communications 6: 8301.