東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo
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モバイルミュージアムの海外ネットワーク MM081TW-LANYANG
「白金傳奇−台灣鰻魚展:PLATINUM LEGEND-Eel Expo」
(2012年11月27日−2013年5月5日)

2012年11月27日、台湾の宜蘭県立蘭陽博物館で「白金傳奇−台灣鰻魚展」がオープンした。この特別展示は、2012年7-10月に、東京大学総合研究博物館で開催された特別展「鰻博覧会−この不可思議なるもの」がきっかけとなり、国立台湾大学および国立台湾海洋大学の共同企画で、今回開催の運びとなったものである。東京大学は総合研究博物館の海外モバイル展示と位置づけ、魚類標本・写真の貸し出し、展示図録の共同執筆で協力した。
薄暗い展示室に足を踏み入れると、まず、東京大学から運び込まれた世界のウナギ属魚類18種・亜種の液浸標本がずらりと並び、訪れた人びとを圧倒する。続いて、世界で初めて採集された天然ウナギ卵、日本が世界に誇る人工種苗生産技術によって生産されたウナギ仔魚の標本など、貴重な学術標本の数々が展示されている。また、今回の展示の特徴として、台湾の人びとのシラスウナギ漁業や鰻養殖への関心の高さを反映し、伝統漁具や漁法に関する展示が多い。圧巻は会場中央に設置された2棟の伝統的な漁師小屋である。真冬の夜のシラスウナギ漁で、漁師が冷え切った体をやすめるために使われている実物が海岸から移設された。
台湾鰻魚展が開催された蘭陽博物館は、台湾北東部の宜蘭県頭城に位置し、2010年にオープンしたばかりの新しい博物館である。ここは清代に港として開かれ、物資の運搬・貿易の拠点となった国有財産の烏石港旧水域であったが、近年博物館用地として移管され、自然公園の海岸湿地帯の中に当館が建築された。沼地に傾いてあたかも沈み込むような独特の建物は、片面が切り立ち、もう片面が緩やかに傾斜したケスタとよばれる丘陵を模して作られ、この地域特有の地理的特質を活かしたデザインとなっている。
太平洋の黒潮流域に面した宜蘭県の河口には、台湾の約40%のシラスウナギが接岸し、昔からシラスウナギ漁の盛んな地域として広く知られている。そうした地域にできた最新鋭の博物館で、ウナギに関する特別展が開催されることは大変意義深い。およそ半年間続くこの台灣鰻魚展は、ウナギという生き物の一般の理解を進め、現在資源が激減してしまったニホンウナギの保全に大きく貢献するものと期待される。

黒木真理(本館助教、魚類生態学)


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