東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo
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モバイル・ユニット2基による展示


「新発表のラミダス化石」展 によせて

諏訪 元 (本館教授、形態人類学)

科学誌サイエンスの2009年10月2日号(特集号)に、11編の論文として、440万年前のアルディピテクス・ラミダス(ラミダス猿人)の全身像ならびに生息環境に関する最新の研究成果が発表された。カリフォルニア大学のT.WhiteやエチオピアのB.Asfawらを代表とする国際共同研究による成果であり、本館の研究者も国際チームの中核の一員として加わっている。

そうした経緯から、最新の研究成果を発信する新たな試みとして、本館を中心に、期間限定のモバイル展を実験的に実施することとした。展示はモバイル・ユニット2基からなり、復元した頭骨と骨盤を、それぞれ中心に据えている。復元は、マイクロCT データを用い、破損の激しい実物の化石標本から導出した。あわせて、 破損した頭骨と骨盤化石のレプリカを展示ユニットに含めている。頭骨の復元は、総合研究博物館を中心とした研究グループが実施した。骨盤の復元は、ケント州立大学と本館の研究者らが共同して作製した。

ラミダスは、1994年に発表されたが、その全貌については、今まで不明であった。後続のアウストラロピテクス(約400万年前から100万年前ごろまで生息)と異なり、把握性の足をもち、直立2足歩行への適応が完成していなかった。四足型の下肢の蹴り出し構造をも一部保持し、森林から疎開林を中心に生息していたと推定されている。今まで知られていなかった、アウストラロピテクスに先行する新たな人類進化段階を示し、人類と類人猿の共通祖先についても多くを示唆する化石資料として注目されている。


2009年10月2日から10月31日まで本館で
展示を行い、
2009年11月3日から11月29日まで国立科学博物館(常設展内)に展開予定である。