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    ネットに入った骨格群

E6
網の中の誕生
バックヤードの光景

壁にかけられているのは、制作途上の動物の骨である。大切な骨をくるんでいるのは、輸送時にみかんやタマネギを包むネット袋だ。

標本をつくる人々は、それぞれに工夫を重ねる。自分で考案した道具を携え、自分で見出した手法を駆使して、コレクションをつくる。ときにそれは、どこにでも売られている、どこでも見ることのできる道具を利用しての作業となる。このみかんネットの利用は、骨づくりの学者のすばらしい“発明”である。

多くの動物は、大小不揃い、形も様々な骨のパーツを、一個体の動物から取り出して標本化する。たとえば、頭蓋骨や寛骨や肩甲骨はたいてい大きく、背骨や足首や指の骨は往々にして失くしてしまいそうに小さい。しかも、骨づくりの過程は、すべての骨を湯で加熱し、水で洗うということを繰り返す。一つ一つの骨をバラバラなまま加熱し洗うことは困難だ。

誰が考案したか、いつのまにか博物館にはみかん用のネットが常備されるようになった。今ではネットは、博物館のアクティビティの象徴といえるだろう。精力的な博物館なら、年間10万個を超える骨のパーツを洗う。厳しいことだが、その膨大な作業を全うできるかどうかが、博物館の質を決める。その傍らに必ずあるのが、農産物に使う当たり前すぎるこのネットである。 (遠藤秀紀・楠見 繭)