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    鉄鉱石。オーストラリア・マウントホエールバック産、海外製鉄原料委員会寄贈(EN101034)

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高品位鉄鉱石

鉄資源のおよそ80%は縞状鉄鉱層から得られている。縞状鉄鉱層の大部分は、35億年前から19億年前の間に海底に堆積したもので、産地はオーストラリア、北米、南アフリカ、インド、グリーンランドなどの古い地質帯に限られ、日本のように新しい地質には存在しない。縞状鉄鉱層はその名が示す通り縞状の構造をもち、主に石英からなる白色層と、鉄の鉱物を多く含む赤褐色から黒色の層が交互に積み重なってできている。鉄の鉱物は酸化鉄である磁鉄鉱や赤鉄鉱などからできており、硫化物の黄鉄鉱を含む場合もある。鉄は2価では水に溶けやすく、3価だと水に溶けにくい性質を持つ。もともと地球は今よりも還元的な環境にあり、鉄は2価の状態で海水に溶けていた。生物の光合成により増加した酸素によって鉄は酸化されて3価になり沈殿した。これが縞状鉄鉱層の大きな成因と考えられている。縞状鉄鉱層は地質学的な特徴からアルゴマ型とスペリオル型の2つに分けられる。アルゴマ型は、スペリオル型に比べ鉱床規模が小さく、火山岩を伴い、主に35億年前から27億年前に生成したとされている。スペリオル型は、鉱床規模が大きく、大陸からの砕屑物を伴い、主に27億年前から19億年前に生じたと考えられている。鉄は海底熱水噴出などにより海水に供給されたと考えられているが、これらのタイプの違いを説明するには、堆積環境や熱水の供給源の違いなども考慮してモデルを組み立てていかなくてはならない。

縞状鉄鉱層は鉄を30%程度含んでいるが、これでは鉄鉱石としては品位が低すぎる。そのため、鉄鉱石として採掘されるのは、熱水や天水の作用などにより二次的に鉄の含有量が上がったものに限られる。展示標本は、西オーストラリアのマウントホエールバックの鉄鉱石である。25億年前に堆積したスペリオル型の縞状鉄鉱層から二次的に鉄富化した鉱床で、赤鉄鉱が緻密に集合した高品位な鉄鉱石である。 (清田 馨)