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    ツチブタ(Orycteropus afer)。胎盤、液浸、径150mm、2010年採集

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    ツチブタ(Orycteropus afer)の胎盤

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B37
ツチブタ胎盤

ツチブタはアフリカに生息する珍しい哺乳類である。日本語でブタという名前を与えられているが、家畜のブタとはまったく異なる動物種である。ゾウ類、カイギュウ類、ハイラックス類、ハネジネズミ類などのアフリカ獣類と同じ系統に属する種で、一種で管歯目ツチブタ科を構成している。古典的分類学の時代から他の系統との類縁関係が明確にならない特異な種として知られていた。多様性の乏しいアフリカ獣類のなかでも、四肢に高い掘削機能を備えて、高度な地下生活に適応して特殊化した種という理解が成り立つであろう。ツチブタは体重60㎏程度の哺乳類であるが、先端の尖った指・趾をもち、前後肢の強力な屈曲伸展と肘の複雑な回転運動により、土を砕き、破砕した土砂を連続的にトンネルの外へ掃き出すことができる。

標本は、東京の恩賜上野動物園で飼育個体が出産した際に採集された胎盤である。ツチブタの飼育例は多いとはいえず、繁殖と出産が成功することは少ない。胎盤が収集され研究が可能となることは希である。哺乳類の中でも、アフリカ獣類の胎盤の研究は進んでいないため、胎盤の進化を論じるうえで今後貴重な情報をもたらすことが期待される。

 東京大学総合研究博物館は、恩賜上野動物園と協力しつつ、ツチブタの研究を続けている。死体解剖によって掘削機構が研究され、また、このように後産を回収することで繁殖メカニズムについての解明が進んでいる。 (遠藤秀紀・楠見 繭)

参考文献 References

遠藤秀紀(2002)『哺乳類の進化』東京大学出版会。