東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo
東京大学 The University of Tokyo
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研究内容から


   

1) 1000万年前の新種の大型類人猿 Chororapithecus abyssinicus
2006年から2007年のエチオピアにおける古人類学調査で、ゴリラの系統に属する可能性が高い新種の大型類人猿が発見されました。 →詳細


2) タイトル
エ チオピア地溝帯南部、コンソ遺跡群は約200万年前から100万年前の間の動物化石と旧石器を豊富に出土する調査地です。人類化石としては140万年前ごろのホモ・エレクトスとアウストラロピテクス・ボイセイの化石が発見されています。現在、地質年代学的背景、古環境と動物相の進化変遷、そして人類化石について分析を進めています。

図1 コンソ遺跡群付近のエチオピアの地溝帯
図2 世界最古級のハンドアックス
図3 ボイセイ猿人の下顎化石


 


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図2図3


3) 現代人、現生類人猿、化石人類・類人猿の歯の形態解析

マイクロCTなどの高精細3次元形状データを用い、現代人、現生類人猿、化石人類・類人猿の形態解析を行っています。特に歯冠構造とエナメル質厚さ分布に注目し、類人猿から人類へ至る進化過程を検証しながら、アルデピテククスなど最古の人類化石について解釈を進めています。



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4) 食人痕と疑われる弥生時代人骨

三浦半島の海蝕洞穴遺跡から出土した大浦山人骨は、食人を伴う特異な解体埋葬と解釈されています。本研究では同じ遺跡の人骨と獣骨を比較し、考古学的コンテキスト、タフォノミー、損傷パターン等、それぞれのもつ情報を統合しながら、損傷痕の詳細について定量的評価を行っています。これにより、本資料を食人痕とみる妥当性を実証的に検証しようと考えています。

図1 グリットと層位ごとの、人骨片と獣骨片の出土数
図2 損傷痕のある大浦山人骨

 
図1 図2
5) 三次元形状データベースを用いた現代日本人手指骨欠損部分の復元

発掘により化石人骨や歴史時代人骨が出土する時、それらが完全な形で残っていることは多くありません。その為、欠損部分の復元を行なう事が多いのですが、従来は熟練者の経験と感性に基づく作業が必要でした。対して私達は、骨形態の個人差の現れ方を三次元的にモデル化し、客観性の高い復元手法を開発してきました。その復元結果は、単純な線計測による欠損値推定結果と同等以上の復元精度を示します。

図1 三次元形状データベースによる骨形状復元の概要図
図2 現代日本成人の右手第三中手骨の復元結果の例

 


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6) 縄文人の四肢主要長骨の成長パターン

縄文人は現代日本人よりも“頑丈”な体幹骨をもつことが知られており、その形態形成の要因を探ることは人類学上の重要な研究テーマのひとつとなっています。従来の研究では成人骨のみを用いて議論が進められてきましたが、本研究では特に成長期における四肢骨を対象とし、成人骨ですでに指摘されている代表的な形態特徴の形成過程および形成要因を明らかにするよう取り組んでいます。

図1 胎児期から青年期にわたる縄文人の左大腿骨
図2 縄文時代の新生児(推定)における大腿骨骨幹中央部のCT断面画像と
    その2値化画像

 
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7) 後期更新世人類(港川人)の頭蓋腔

沖縄県港川出土の化石人骨は、国内で数少ない後期更新世人類化石の中でも保存状態が最も良く、アジアの人類進化を考える上でとても重要な資料です。従来分析が手付かずであった本資料の頭蓋腔ですが、マイクロCTによって、詳細で正確な形態学的分析が可能になりました。現在、頭蓋腔容積の再評価をはじめとする形態記載、及び他集団との関連を明らかにする試みを進めています。

図1 港川1号頭骨、およびその頭蓋腔
図2 CT画像計測によって得られた港川1号の頭蓋腔容積推定値

 
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8) コンソ遺跡出土化石有蹄類を対象とした古生態学的研究

エチオピア・コンソ遺跡からはボイセイ猿人とエレクトス原人を含む多数の哺乳類化石が出土していますが、中でもウシ科アンテロープ類が非常に多く得られています。これらの化石種について、生息環境や食性を推定し、その時代変化を明らかにすることを目指しています。具体的には、臼歯の咬耗面に残された傷を電子顕微鏡で観察し、生息環境・食性が明らかとなっている現生種との比較を進めています。

図1 コンソ遺跡出土アンテロープ類(アルセラフィーニ族)の大臼歯化石
図2 食性の明らかな現生種(ニホンジカ)大臼歯咬耗面の電子顕微鏡像。イネ科草本を   多く採食する集団(左)と木本植物が多い集団(右)とで特徴は異なる。

 
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9) 縄文人の下顎骨の内部構造と成長

咀嚼時にかかる負荷の大きさによって下顎骨の形態が変わりうることが報告されていますが、「頑丈」とされる縄文人の下顎骨は現代日本人と異なる咀嚼環境への機能適応と言えるのでしょうか。本研究では外部構造に加え、CTスキャナを用いて内部構造からも調査を進めています。同時に、成長を通した標本群から、下顎骨正中断面内の骨分布パターンや縄文人の下顎骨の特徴が出現するタイミングを明らかにしようと試みています。

図1 縄文人(左)と現代日本人(右)の下顎骨
図2 下顎骨正中断面における骨分布の成長パターン

 
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