東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo
東京大学 The University of Tokyo
HOME ENGLISH SITE MAP
ANTHROPOMETRIA

MESSAGE
滝沢直己

あたかも自然界の産物と錯覚してしまうほど「数理模型」は美しいフォルムを持っています。その美しさの根拠は数式に始まる、ということに私は宇宙の法則を感じます。
数式が立体化するまでのプロセスはコンピュータの無い当時を想えば想像を絶するものがあります。
「数式」が「数理模型」へと次元を変えるプロセスに思いを馳せ、ハイテクが当たり前の今日に、あえてアナログ的技術を用いて作ってみることによってデザインが衣服と人体の関係にどう関わっているかとうことを再認識したい、という私の思いから第3回モード&サイエンスのプロジェトが始まりました。
線で始まるデザイン画から始まり、平面である布から立体である人体を包み込むための衣服を作る作業 − 「衣服を作る」ということは人体を無視しては始まりません。我々が普段当たり前のように着ているジャケットも、実は平面である布地をいかに立体である人体に沿わせるか、という職人達の長年の試行錯誤の結果実現されています。
実現への始まりは人類がウール素材と向き合ったことでした。動物の体毛から作られたウール素材は生命の創造物であるがゆえ、糸自体が熱や蒸気によって縮んだり、織り組織との相乗効果により部分的に伸ばすことも可能です。そこに職人の長年の勘が加わり平面である布地を限界はあるものの自由自在に操り立体である人体を「包む」ことができるようになったのです。
今回は、7つの数式からなる「数理模型」のフォルムから発想したデザインをジャケットの縫製技術を駆使しながら完成させます。完成へ向けて最初にやることは型紙作りです。フォルムが決まり、りんごの皮を剥くように表面の形を平面に落としていくと、一つ一つ異なった平面図形が浮かび上がってきます。
つまり衣服制作上で言う「デザインの式」が現れてきます。平面である型紙と、そこから立体として生まれたジャケットのプロトタイプ、そして単なる作品で終わらず、プロダクトとしての可能性を考える製品サンプルができるまでのプロセスを展示形式で紹介いたします。

(本館特任教授、服飾デザイン)

会期 2010.10/28thu/29fri/30sat
東京大学総合研究博物館小石川分館
The University Museum, The University of Tokyo Koishikawa Annex


ANTHROPOMETRIA展のトップページへ