東京大学総合図書館には、明の万暦版大蔵経(嘉興蔵)が所蔵されています。文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成─寧波を焦点とする学際的創生─」の中に組織された「仏教道教交渉班」では、数年にわたってその調査研究を続けてきました。この万暦版大蔵経は、いわゆる鉄眼版大蔵経の普及に尽力した江戸時代前期の黄檗宗の禅僧了翁道覚(1630-1707)が明から取り寄せ、延宝8年(1680)に江戸白金の瑞聖寺に寄進したものです。その後、明治以後に重野安繹・田健治カなどの興味深い所蔵者の手を経ながら、最終的に田氏により大正13年(1924)に東京大学総合図書館へ寄付されたことがわかっています。
今回の展示では、この大蔵経の特徴や伝来過程に関する研究成果の一端を、装幀や版式・扉絵・蔵書印等によって紹介していきます。あわせて東京大学所蔵の宋版大蔵経の一部をはじめ、現代へといたる東アジアの大蔵経関係資料を展示し、東アジアに展開した大蔵経の文化に対する歴史的研究の意義と魅力に迫ります。
主催:
・ 文部科学省特定領域研究 東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成
(寧波プロジェクト)仏教道教交渉班
・東京大学総合研究博物館
白金の瑞聖寺
展示会場