東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo
東京大学 The University of Tokyo
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ごあいさつ
林 良博

私たちは鉄がなければ生きてゆけません.この単純な,しかし重要な結論を,私たちは生物学のみならず,地球科学,環境科学,考古学,物理学,化学,天文学など幅広い研究分野から「鉄」を概観することで導き出しました.今回の展示はこの結論をふまえた上で,鉄を通じた新しい宇宙誌や地球誌,生命誌,人類誌を提示しようとする試みであります.
鉄は身近な存在です.それゆえ鉄に関連した興味深い話は,探せば無尽に見つけることができます.しかし,私たちが目指したのは,そうした事例の種類や数を集めることではありません.「そもそも鉄という元素がいかにして誕生したのか」という根本的な疑問に始まって,太陽系や地球の形成,そして生命の誕生や進化において,鉄がどのような役割をはたしてきたのか.なぜそれが現代文明にまでつながっているのか.こうした問いに迫ることに興味を持ったのです.その答えを一本の軸として示すことで,鉄というものの本質が見えてくるのではないか.こうした思いが,「鉄―137億年の宇宙誌」という,一見奇妙な展示会のタイトルにあらわれています.
このようなアイディアに基づいた世界的にも極めて稀なイベントですから,展示を成立させるためには,多岐にわたる分野における研究者の協力が不可欠でした.幸いなことに東京大学は,各方面において世界的に活躍しておられる研究者が多数在籍されており,こうした異分野の知を集約して問いを考えるという目的に最適とも言える場所であります.さらにこうした研究者らは,学外において世界をリードするさまざまな研究者のもとへも導いて下さいました.その結果として,それぞれの分野で第一線の研究をおこなっている多数の方々のご協力を得ることができたため,最先端の研究を基盤とした幅広い展開があり,展示会という形でその成果を公表することが可能となりました.東京大学がみた鉄とはどのようなものか.鉄が私たちに必須であるという結論にどのようにしてたどり着いたのか.人類と鉄との関わりは,今後どのように変わっていくのか.このような視点で展示をお楽しみいただければと考えております.
最後になりましたが,東北大学金属材料研究所,東京工業大学応用セラミック研究所,国立科学博物館,国立極地研究所,新日本製鐵株式会社,小岩金網株式会社をはじめ,展示会の実現のためご努力いただいた関係各位,機関にあつく御礼申し上げます.

(本館館長)


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