本学創立130周年ということでまず考えたのが、先立つ120周年以降ここ10年間に収蔵された標本資料の展示である。そのうちのとくに建築関係の標本資料へ注目し、さらにそのうちのひとつをもとに130年という時間を空間的に表現することを企図したのが本展示である。
周年事業ということ以外にもうひとつ本展示を考えるきっかけとなったのが展示スペースである。50m2へ満たない広さながら3層分の高さがある特徴的なもので、そこへ130枚のキャンパス図面を積層させることで、130年という時間を空間的に表現できないか、というところから本展示はスタートしている。当初はインスタレーションとして考えていたが、素材だけでなく展示の枠組みへも建築的要素を組込みたいという意図から、とくに「超高層アーカイヴ」プロジェクトと名づけてみた。
その後さまざまな可能性を検討した結果、最終的に水平方向へ積層させたものとした。そもそも超高層へは文字通りの意味以外に、比較的なじみ深い建築イメージのひとつとしての意味も期待しており、より一般的にはアーカイヴへ広義の建築的要素を組込んだ「建築的アーカイヴ」のようなものができないか、ということが当初から念頭にあった。この点も踏まえて最終的な名称を「超多層建築的アーカイヴ」プロジェクトとした。
透明フィルム面の微妙なたわみや外装アクリルケース面の傾斜はあらかじめ計算していたものではないにせよ、914×500の透明フィルムへ印刷されたキャンパス図面とそれらを補強・支持する900×10×2の木材を積層させるというシンプルな方法を通して実現された質感は、現代的な建築表現へも通ずる要素を備えるとともに、何より周年事業の定番である年史編纂や記念館建設とは異なった形で130年という時間を極めて直截に表現しえているように思われる。
そのほかここ10年間で新たに収蔵された建築関係の標本資料は世界各所へ及んでいるが今回は比較的近いものを中心に現国会議事堂・旧丸の内ビルディング関係の標本資料5点、本学へ関わる標本資料10点を展示している。また同じ場所で旧来から行われている古生物模型・植物標本資料の展示も引続き見ていただくことができる。
(本館助教 建築史学)