東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo
東京大学 The University of Tokyo
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「大地の芸術祭―越後妻有アートトリエンナーレ2006」の開催期間中に、新潟県十日町市の旧名ヶ山小学校を舞台とする「福武ハウス」において、日本を代表する7ギャラリーとともに東京大学総合研究博物館が参加して作品展示を行うことになった。総合研究博物館は、ミュージアム・テクノロジー研究部門が現在進めているモバイル・ミュージアム・プロジェクト「アート&サイエンス」の一環として『博士の肖像(T)』(ミクストメディア)、『博士の肖像(U)』(ヴィンテージ・プリント)を展示する。

福武ハウス(旧名ヶ山小学校)全景


博士の肖像(T) ミクストメディア


博士の肖像(U) 12点のヴィンテージ・プリント


インスタレーションを監修した西野教授


モバイル・ミュージアム・プロジェクトについて  西野嘉章

  巨大集中型のミュージアムから分散携帯型のミュージアムへという、博物館存在様態のパラダイム変換を図るべく投企された「モバイル・ミュージアム・プロジェクト」の一実験が、越後妻有アートトリエンナーレの「FUKUTAKE HOUSE」で始まった。東京大学総合研究博物館小石川分館に収蔵されている、東京帝国大学時代の有名な博士の肖像を撮ったヴィンテージ・プリント12点とブロンズ彫刻1点を組み合わせた、2点のインスタレーションがそれである。
  このプロジェクトの眼目は、国内有数の優良企業による文化貢献事業への参加を通じて、博物館という「建物」のなかに自閉してきたこれまでの博物館事業に、「内」から「外」へ、施設建物から市民社会へという新しい流れを生み出すこと、すなわちミュージアムの新しい、動態的な学芸事業モデルを、社会に向かって提案することにある。
  ミュージアム事業のなかで、社会教育、情報発信、公共サーヴィスなどの必要性が謳われてはきたが、既存の手法の繰り返しに終始するなかで、予算や人員などの削減が現実化し、ミュージアムの置かれている環境は眼に見えて厳しいものになっている。こうした国内の厳しい現状を直視したとき、社会との太く、かつまた持続的な絆のもてないミュージアムは退場を余儀なくされるに違いない。「モバイル・ミュージアム」の実験が、指定管理者制度の導入で新たな事業展開を求められるミュージアムの活動に、一石を投じることができれば幸いである。
(本館教授 博物館工学・美術史学)

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