東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo
東京大学 The University of Tokyo
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大航海時代の西欧諸国においては、Wunderkammer(驚異の部屋)と呼ばれる珍品陳列室が王侯貴族や学者たちによって競ってつくられたことが知られています。人は誰しも生まれたばかりのときには、目に見えるもの、手に触れるもの、「世界」を構成するありとあらゆるものが「驚異」であったはずです。このような「もの」をめぐる原初的な「驚異」の感覚は、体系的な知の体得へ先立つものであるとともに、新たな知の獲得へと人々を駆り立てる潜在的な原動力ともなっているものです。
驚異の部屋

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驚異の部屋

驚異の部屋

驚異の部屋
写真=奥村浩司(すべて)
学術標本の殿堂としての「驚異の部屋」  

 東京大学総合研究博物館小石川分館は、1970年に国の重要文化財に指定された東京大学現存最古の学校建築〈旧東京医学校本館〉を2001年11月に総合研究博物館の分館として一般公開したものです。翌2002年12月から開館1周年を記念して行われた特別展示「MICROCOSMOGRAPHIA―マーク・ダイオンの『驚異の部屋』」(2002年12月7日―2003年3月2日)は、東京大学の学術標本や廃棄物を現代アートの文脈から再構成しようとしたもので、1万人近い来館者を集め、マスコミ各界へ幅広い話題を提供いたしました。その後の常設展示「COSMOGRAPHIA ACADEMIAE――学術標本の宇宙誌」(2003年3月19日―2006年2月19日)へ新たな標本や什器を加える形でスタートしたのが、現在開催中の常設展示「驚異の部屋――The Chambers of Curiosities」(2006年3月9日〜)です。

 大航海時代の西欧諸国においては、Wunderkammer(驚異の部屋)と呼ばれる珍品陳列室が王侯貴族や学者たちによって競ってつくられたことが知られています。人は誰しも生まれたばかりのときには、目に見えるもの、手に触れるもの、「世界」を構成するありとあらゆるものが「驚異」であったはずです。このような「もの」をめぐる原初的な「驚異」の感覚は、体系的な知の体得へ先立つものであるとともに、新たな知の獲得へと人々を駆り立てる潜在的な原動力ともなっているものです。交通・通信技術の発達とともに地理的な「世界」が縮小されていく一方で、知の「世界」は加速度的に拡大され、高度に細分化され、その先端的な広がりの全貌を把捉することはもはや容易ならざることとなっています。このような21世紀という時代において、東京大学草創期以来の各分野の先端的な知を支えてきた由緒ある学術標本をもとに、「驚異の部屋」が構築されることは、次世代の知を担うべき人々にとっても少なからぬ意義を持つことと思われます。大学の過去・現在・未来へ通底する学際的かつ歴史的な原点とは何なのかということが、本常設展示へ込められたひとつの問いかけでもあります。 展示コレクションとしては、国内有数の自然史標本コレクションへ加えて、お雇い外国人教師E.モースの直弟子らの動物標本コレクション、医科大学初代学長三宅秀の学術標本コレクション、工部省工学寮ゆかりの工学模型・機器のコレクション、そのほか本学の教育研究を担ってきた博士らの肖像のコレクション、本学の教育研究の現場を支えてきた標本・図画・模型・機器・什器のコレクションがあります。当初の「学校建築デジタルミュージアム」構想を踏まえた学誌財グローバルベースのコンテンツ拡充、最新のデジタル技術を駆使したミュージアム・インターフェース構築をめぐる実験的試みも継続的に進められています。  

 学内外からの多大なるご協力のもと、学術的位相や造形的特性が異なった標本を幅広く備えることで、総体としての学術標本の魅力を伝えようとするとともに、標本1点1点の質感を重視し、標本を支える什器も古いものを中心に厳選して、相互に最適な組合せを模索することで、全体としてひとつのアート作品へ比肩しうる究極のミュージアム空間の実現を図っています。新旧の木造骨組みが混交する東京大学現存最古の学校建築、都心有数の自然環境を享受する日本最古の植物園という基礎条件を鑑みても、標本・什器・建築・立地というトータルな面において、まさに〈学術標本の殿堂〉とでも呼ぶにふさわしい状況を達成しつつあるのが当館といえます。  

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