東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo
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私たちヒトはどのような進化を経て現代に至ったのか。 人類がたどってきた進化の道筋を実証する化石骨や古人骨資料は、フィールドワークを通じて創成され、博物館現場を中心にその科学的解釈がなされます。 本展では、440万年前のラミダス猿人や16万年前の最古級のホモ・サピエンスなど、アフリカにおけるフィールドワークの成果と本館における研究とキュラトリアルワークの現場を融合的に展示紹介します。
アフリカの骨、縄文の骨
アフリカの骨、縄文の骨

アフリカの骨、縄文の骨
アフリカの骨、縄文の骨

アフリカの骨、縄文の骨
アフリカの骨、縄文の骨

アフリカの骨、縄文の骨
展示風景 (写真=奥村浩司)

「アフリカの骨、縄文の骨」

「骨」という共通の題目があるものの、この二つの間のつながりは、どこにあるのだろうか?
「アフリカの骨」としてラミダスやヘルトなどの人類学の先端的な研究を、「縄文の骨」としては本館の膨大な古人骨コレクションにおける最近の取り組みを取り上げています。
1994年当時、最古の人類化石として注目されたラミダス猿人(440万年前)、その発見過程やレプリカをエチオピア国外で初めて展示公開。また、最古の「現代人」化石頭骨のマイクロCTデータや、そこから起したハイテク・レプリカを展示しています。これは、当館の人類学の研究者らが、ここ10年ほどの間に直接関わってきた研究活動の中から、特に興味深いと思われるものを公開しています。
また、今回の特別展は、言うなれば「骨しかない」展示でもあります。展示というメディアを用いて研究成果を公開するならば、通常の学術情報の伝達だけでなく、いかに「骨をみることはおもしろい」か、それを伝えたいところです。そうした演出効果を各所に盛り込みながら展示は作られています。
「骨」の様々な表情が、学術的メッセージを超えた魅力として来館者に訴えかけ、結果、学術情報のより効果的な周知につながることを期待しています。展示空間の全体が一体となって人類進化の研究を表現した「作品」であると感じていただければ幸いです。
展示会場では、両者が有機的に関わりあいながら、新たな研究とキュラトリアル・ワークの成果へとつながっています。そうした「動いている」研究とキュラトリアル・ワークの姿を展示という三次元メディアを通して表現してみました。
「アフリカの骨、縄文の骨」展は、総合研究博物館における、人類学とミュージアム・テクノロジー各々のオリジナリティを十分に発揮しながら融合的に作製した展示です。

学術企画:諏訪 元
東京大学総合研究博物館助教授/キュラトリアル・ワーク研究系(形態人類学)
展示企画/デザイン・アートディレクション:洪 恒夫
東京大学総合研究博物館客員教授/ミュージアム・テクノロジー研究部門(空間デザイン)

アフリカの骨

600万年前以前から現在へとむかって人類の系譜を辿ってゆきます。
ラミダスの模式標本(模式標本=種を定義づけするときに指定する標本)の初公開レプリカ
ラミダスの子供下顎の標本(ラミダスを代表する標本の一つ)の初公開レプリカ
ラミダスの発見現場などの映像展示(初公開)
1924年に猿人アウストラロピテクスが初めて発見され、その50年後に有名な「ルーシー」(全身の40%からなる猿人化石)が発見されました。ルーシーなどから、アウストラロピテクスの全貌が知られるようになり、「400万年」の人類史が語られるようになりました。一方、人類が類人猿と分岐して、間もない頃の人類祖先像は謎のままでした。こうした状況が1990年代まで続いていましたが、アウストラロピテクス段階以前の人類祖先であろう最初の画期的な発見がラミダス(440万年前)でした(1994年9月22日、全国主要紙一面掲載)。その後の10年間で、さらに古い人類化石が発見され、人類の系譜が一気に600万年前まで溯りました。これら400万から600万年前の人類化石は、ラミダスの全身にわたる未発表の標本群をも含め、その全貌に関する研究が現在進行中です。そうしたなか、2003年と2004年には、国際共同研究の一環として本館でマイクロCT調査を実施するなど、先端的な研究の一翼を担っています。
100万年前のアフリカの原人化石、ダカ人(初公開のハイテク・レプリカ)
ダカ人とは、アフリカでは希少な100万年前ごろの原人化石で、原人から新人へいたる進化の道筋、アフリカとユーラシアにおける人類進化の軌跡を考える上で重要な、やはり研究途上の化石頭骨です。本館で実施したCT調査に基づいたハイテク・レプリカを展示しています。
16万年前の最古の「現代人」化石頭骨、ヘルト人(初公開のハイテク・レプリカ)
ヘルト人とは、2003年に世界最古の「現代人」化石として発表された、16万年前の化石頭骨です(2003年6月12日、全国主要紙一面掲載)。ヘルト人の頭骨化石については、本年3月から9月までに行われた愛知博・アフリカ共同館のテーマ展示の一部として、レプリカが展示されました。愛知博の終了後、ヘルト人関連の展示はエチオピア国立博物館に移設されましたが、平行して、本展においてはCT調査の過程で作製したハイテク・レプリカを展示公開しています。

縄文の骨

縄文の骨―標本データベース
当館収蔵の日本の古人骨コレクションは、縄文時代から近代まで、各歴史時代を網羅する標本群として収集され、国内外でも有数のものとして知られています。現在、これらの標本のうち、特に縄文と弥生時代人骨について、それぞれの標本を再評価しながら関連情報を集約したデータベースの作製を進めています。
縄文人とヘルト人の比較
ヘルト人を現代人の中で位置付けてみました。世界各地の現代人集団と統計的に比較するだけでなく、当館所蔵の縄文人と比べてみました。ヘルト人の頭骨は、一言でいうと、ごつい現代人をさらにごつくしたようなものです。それでは、日本人の中ではごついとされている縄文人は、十分に個体差を考えた場合、どれだけヘルト人に迫るのか、今回の展示を通して調べてみました。
縄文の骨―骨を読み解く
キュラトリアル・ワークの充実によって新たな研究視点が様々に浮かび上がってきます。また、人類化石や古人骨を扱う研究そのものと、博物館的なキュラトリアル・ワークとは、実際には共通の眼力、素養、専門性のもとに成り立っているものです。本展では、そうした専門性を来館者に実感していただきたく、通常は資料室の中でさえ並べて見る機会が少ない、専門的にも入門的にも学び取るものが多い古人骨展示を試みました。
縄文の骨―姥山貝塚より
本館の古人骨コレクションの中から、姥山貝塚の標本群を取り上げてみました。姥山貝塚は千葉県市川市にある、日本を代表する縄文時代の貝塚遺跡の一つです。東京帝国大学人類学教室が、1926年に、当時最先端の発掘調査を実施し、縄文時代の竪穴住居址が初めて完全に発掘されるなど、目覚しい成果がありました。その中の一つが、一住居址から発見された5個体分の人骨で、縄文時代の家族構成を考える参考事例として名高いものです。これらの人骨は、床面に直接横たわっていたため、一世帯の家族がほぼ同時になんらかの事故死をした可能性が指摘されてきました。今回は、この標本群を臨場感あふれるかたちで展示し、同時に、これらの家族論に関する新たな研究展開を紹介しています。

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