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1階展示フロアを使った常設展示を開始しました。これは、先端的な研究成果やキュラトリアルワークがなされたばかりの未公開資料を学内外に広く公開する特別展示とは異なり、教育・研究に不可欠な基本資料をより長期にわたって提示しようという試みです。今回は、アジア各地で収集された考古学・人類学関係の標本資料をそろえました。1877年にE.モースが発掘した大森貝塚の縄文土器、弥生式土器命名の基準となったタイプ標本、今世紀初頭に鳥居龍蔵が撮影したアジア各地の民族古写真、あるいは北海道で発掘された旧石器時代の細石刃一括資料など、東京大学が保管する考古学・人類学の基準資料を展示しています。

また、同時に、デジタル・ミュージアムのコーナーをもうけ、これまでに当館でデジタル化された資料を大形スクリーンで通覧できるようにもしています。

入館はどなたでも自由です。教育・研究、あるいは憩いの場としてご活用いただければさいわいです。



特別展示

「Science for Life 生命の科学」

会期:1998年07月02日 〜1998年08月09日

主催=東京大学総合研究博物館
共催=東京大学医科学研究所
協賛=英国大使館
協力=ブリティシュ・カウンシル,ウェルカム・トラスト

第一部

日本の生物学の起源─モースと本草学─

 生命科学の基礎分野である、動物学と植物学。まずは、日本におけるその起源と成果について展示する。動物学の基礎は、東京大学動物学教室に初代教授であるモースによる功績が非常に大きく、このモース教授の様々な著作を通して、当時の日本の動物学の立ち上げの時代を振り返る。また植物学は、江戸時代より薬草の研究である、本草学として盛んに行われていた。そこで、当時の様子を伺うことの出来るA級資料である、東京大学理学部附属植物園所蔵の、「大和本草」、「本草項目啓蒙」といった貴重書を展示する。

日本の全種類の蝶

 南北に細長い日本は亜熱帯から亜寒帯まで様々な植生帯を抱えており、比較的多くの昆虫類が生息している。蝶類でもはっきりと生息が確認されているものが約230種、それに迷蝶として約40種が知られている。第一部では、東京大学が所蔵する国内の蝶の全種類の標本を、今回初めて一同に集め、日本の自然が生み出した昆虫の美しさを展示する。

試験管の中で形成される動物の器官

 動物学の最先端の研究成果として、動物の発生のメカニズムについて展示する。現代の生物化学では、動物の発生メカニズムが徐々に解明されきており、それによって試験管の中で動物の特定の器官、例えば心臓や腸、肝臓、それだけを人工的に生成することが可能になった。第一部では、動物学の初期の偉業として、東京大学動物学教室第三代教授箕作佳吉のカメの発生を観察して描いた美しいスケッチも展示している。これらと比較することで、現代の生物学の進歩というものが、より一層鮮明になるだろう。

光る植物

 植物学の最先端の研究成果として、光る植物を展示する。光る植物とは、自ら光るのではなく、蛍光物質を生成する遺伝子を組み込んだウィルスをを植物に感染させたものである。ウィルスの感染した部分は、暗がりの中で紫外線を当てると美しく蛍光する。この蛍光部分を追跡していくことにより、ウィルスによる植物の病気の様々な特性を調べることができるのである。


第二部

動く骨格模型

 ワイヤーやノブやレバーで頭や、手、指を動かすことができる骨格模型。ニッケルでメッキした実物大のプラスチック製の骸骨が腰掛けに座っている。実際に首をかしげるなどさせると、動きがリアルで、不思議とユーモラスでしばらく動かしていろいろな動きをさせたくなる。その過程で関節の機構がよくわかるようになる。軟骨のゴムをはさんで脊椎骨が積んであり、先端を持って曲げると、脊椎の曲がり方がよくわかる、脊椎の模型。幼児と成人の泉門部の比較用の頭蓋骨模型が付属している。

臓器のパズル

 壁に備え付けられているトルソ(彫像)の臓器が取り出し/組み立てできるパズルになっている。タイマーで時間を測ることができ、臓器パズルとして組立てのスピードを競って楽しむことができる。その過程で臓器の構成や体の中での位置が楽しみながら学べるようになっている。独りでに巻き戻るリールにくっついたゴム製の腸もあり、つまみを使って腸を引き出して、その長さを実感することができる。

人体の内部を見る

 模型の目、耳の内部、胃の中が仕掛けられた、実物大の人体模型を実際の医療用の検査器具を使ってのぞくことができる。オトスコープ(耳を検査する器具)を耳に入れ、接眼レンズを通してのぞくとピンクがかった外耳管の端の灰色の鼓膜を見つけることができる。
  オプサルモスコープ(目を検査する器具)を模型の目にあて、眼底の血管と視神経がはじまる黄色い円盤状組織を見つけることができる。また、内視鏡(胃カメラ)が模型の胃に挿入されており、これを操って胃の内側のひだを見たりすることができる。

心臓の活動を測る

 椅子に座って、肘掛けやヘッドレストにあるセンサーに体を接触させると、脈拍や心電図の測定結果を見ることができる。脈拍計と心電計のパルスが合わないとリラックスしてないことがわかる。リラックスすると、二つの測定器の読みが同調するようになる。


第三部

東京大学医科学研究所の歴史

 わが国では、既に様々な病気を克服し、世界有数の長寿国となった。未知の病気を解明し克服するために、医科学の研究者はその病気の多発地帯に直接赴き、自らの死をも覚悟した上での研究活動、治療活動を行った。現在の高度な医療は、これらの先人達の献身的な活動によるところも大変大きい。本展示では、東京大学医科学研究所やその前身である伝染病研究所における医科学研究の歴史を振り返り、先人達の献身的な偉業を振り返る。

野口英世、志賀潔の自筆履歴書

 黄熱病の研究で有名な野口英世、赤痢菌の発見で有名な志賀潔は、若きころともに医科学研究所の前身である、伝染病研究所の助手に着任し研究を行っていた。彼らが伝染病研究所の助手に応募する際に書かれた自筆の履歴書が、東京大学医科学研究所に所蔵されており、今回これらを初めて一般に公開する。

人間の遺伝子(ヒトゲノム)解析の最先端研究の紹介

 近年、遺伝子治療による医療や、遺伝子組み替えによる農作物の品種改良など、生命科学の最先端では、遺伝子の研究が非常に活発に行われている。東京大学医科学研究所では、人間の遺伝子の解読作業を、スーパーコンピュータを利用して行っており、例えば、アルツハイマー病を引き起こす遺伝子部分がどこかということまで具体的に分かってきている。こうした遺伝子研究の最先端の成果を一般の人にもわかりやすく展示する。

 

・図録

ウロボロス記事 「生命の化学展によせて」