東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo
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チラシ(PDF)

小石川分館特別展示

「生薬リヴァイヴァル」展

このたび、東京大学総合研究博物館では、大学院薬学系研究科・薬学部と共催で、小石川分館特別展示「生薬リヴァイヴァル」を開催することになりました。
本展の眼目は、学内に蓄積された薬学標本の一般公開を通じて、今日の薬学研究と歴史標本のあいだを架橋し、あらたな研究分野開拓の可能性と方向性を示すことにあります。
漢方は中国四千年の歴史のなかで育まれた、とはしばしば言われるところですが、古文献のなかに言及されているものが実際のところ何であったのか、わからないことだらけと言っても過言でありません。実際にこれまで使用されており、したがって信頼がおけるとされる生薬もたしかにあります。ですが、そうしたものを別にすると、どのような植物が、どのようなかたちで薬用に供されていたのか杳として捉えがたい、それが「生薬の世界」なのです。
一例を挙げましょう。タケダ漢方便秘薬は甘草と大黄からなっています。甘草は生薬の名前で、マメ科のカンゾウという植物の根を乾燥したものです。一方の大黄は、タデ科ダイオウの根茎です。カンゾウもダイオウも、様々な同属植物に由来します。
カンゾウは中国の東北地方や、新疆ウイグル自治区の特産品だったようです。商品としての「生薬」が、どのような呼び名でもって、どのような流通経路を辿ってきたのか。甘草については、それを探るしか起源を辿る方法がないのです。
一方、タケダ漢方便秘薬に使われている大黄は、東京帝国大学教授であった中井猛之進が朝鮮半島北部にある標高2541メートルの冠帽峰で発見した一株の「朝鮮大黄」(Rheum coreanum NAKAI)に由来します。それに錦紋大黄の原植物と考えられたRheum palmatum (L.) var. tanguticum MAXIMを掛け合わせ、十八年余の歳月をかけて作種された交配種が「信州大黄」で、これが今日の便秘薬の材料とされているのです。
たしかに、医薬品の成分は化学的な組成から説明することができます。しかし、その構造データだけがあれば事足りるというものでもありません。ましてや、生薬を原料とする場合には、歴史的な生薬サンプルが欠かせないのです。また、それが新薬の製造開発の着想源にも、リソースにもなるのです。
現代のわれわれは、自然の恵みを享受したいという願望に駆られています。しかし、それと裏腹に、天然資源は枯渇し、ますます入手が困難になりつつあります。本展が学術研究機関に蓄積されてきた「生薬標本コレクション」の、研究用リソースとしての再評価を促す機会になれば幸いです。

主催者

会場写真スライドショー(14枚)


主催:東京大学総合研究博物館+東京大学大学院薬学系研究科・薬学部
協力:大学薬用植物園園長・担当者会議+日本生薬学会
会期:2012年12月8日(土)から2012年12月22日(土)、月曜休館
会場:東京大学総合研究博物館小石川分館一階展示室
 地図


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