太陽系から人類、そして文明へ

太陽系から人類、そして文明へ

学術標本から何を感じ取り、如何に新たな知を創生するか。壮大な地球圏とダイナミックな生命圏、そして人類の起源から文明の出現まで、56点の標本セットを一覧する。その多くは、まさに新たな発見を巡る標本そのものである。あるいは好奇心を呼び越こし、知の源泉となる学術標本である。宇宙空間から深海底まで、生物の多面性から文明の創出まで、元素、物質、ゲノム、新種、機能、体制、器官、発生、進化、変異、擬態、生活史、移動、人類、文化について、様々なインスピレーションを回廊状に一覧してみる。

展示の標本は、本館を基盤に各界で活躍の研究者が、それぞれの専門領域と活動にそって選定したものである。分野としては、堅苦しい記述を並べると、固体惑星科学、惑星物質科学、生命地球科学、古生物学、進化形態学、動物分類学、水産資源学、昆虫体型学、保全生物学、進化発生学、比較形態学、遺体科学、古人類学、先史考古学、アンデス考古学、中近東考古学などが含まれる。

太陽系から人類、そして文明へ。太陽系からは、イトカワとフォボス、それと火星起源の隕石などを展示する。海洋生物では、深海で発見された新奇な巻貝、本学の看板研究の一つのウナギ回遊解明の標本、腕足類と貝類初めてのゲノム解読標本などを展示する。太古の古生物としては、三葉虫の流体力学、近年発見の日本最古の陸生四肢動物化石などがある。チョウ類では、色鮮やかな全科を勢ぞろいし、渡りの実例を示めす。骨格と剥製を中心とした連続展示は、生命体の多面性と躍動感に溢れている。人類の進化と関わる展示はその起源に迫るものを含む。中でも、2009年のサイエンス誌発表のラミダス猿人関連品など、エチオピア外では、世界初めての常設出展である。文明史では、本館と関わりの深い西アジアとアンデスの各調査団の著名な発掘品を例示している。

諏訪 元