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    フィリピンヒヨケザル(Cynocephalus volans)。骨格、全長250mm、背側前方寄り左側面。小金井コレクション

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    背側前面

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B34
フィリピンヒヨケザル全身骨格

ヒヨケザルは皮翼目という珍しいグループに属する哺乳類である。種数は少なく多様性は低いが、頸から四肢、尾の間に特徴的な飛膜を広げ、森林で樹間を滑空する特殊化した一群である。和名にサル、英名にlemurという語を含むが、霊長類ではない。フィリピンヒヨケザルはフィリピンの島嶼に分布する。体長350㎜ほどの種だが、飛膜を広げた体の幅は600㎜以上に達し、滑空時のシルエットは大きい。

この骨格標本は、解剖学者・人類学者の小金井良精博士が収集した動物標本のひとつである。詳細な記録は残されていないが、明治から大正の時代に分布域から導入されたものであろうと推察される。小金井博士とその後の医学部の研究者が、日本に近い東南アジアの種であるとはいえ、このような珍しい哺乳類にも関心をもっていたことを示す貴重な標本である。

現在ではフィリピンの分布地の環境破壊が進み、生息数を減らしている。本標本は破損はあるものの、日本国内ではとても珍しい同種の全身骨格である。これも、我が国と東京大学の解剖学・哺乳類学の歴史を語り継ぐコレクションである。 (遠藤秀紀・楠見 繭)

参考文献 References

遠藤秀紀(2002)『哺乳類の進化』東京大学出版会。