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    モア(Dinornis)。卵殻、長径200mm。山口コレクション

B28
モア卵殻

モアは、かつてニュージーランドに生息していた巨大な鳥である。骨格や卵殻が発掘・収集されることから、断片的ではあるが、その形態学的特徴が少しずつ明らかにされてきた。系統的に何種かに分化・多様化していたらしい。体高は3mを超え、体重は250㎏以上に達したと推測される。現在のダチョウやレア、ヒクイドリ、キーウィなどと近縁な系統で、頭部骨格の特徴から古顎類と呼ばれる一群である。モアは古顎類の中でもニュージーランドに隔離されて巨大化し、翼を退化させて、飛翔能力を完全に失った。500年以上前に絶滅したと考えられるが、人間がニュージーランドに到達して以後に滅んだと考えられ、人の手による捕殺・乱獲がその原因である可能性が高い。

本標本は、ニワトリの標本や関連資料を大量に収集蓄積した山口健児(たける)氏のコレクションのひとつである。山口氏は、鶏卵や家畜飼料の生産で知られる日本農産工業株式会社に勤務しながら、コレクションを築いた。この卵も、同社の展示施設である和鶏館で、多くのニワトリ剥製や関連する民具とともに展示されてきた経緯がある。2012年にコレクションのすべてが東京大学総合研究博物館に寄贈され、当該標本は、大学所蔵の学術資料として新たな歴史を歩み始めた。モアの卵殻の標本は非常に珍しく、現在、卵殻構造の詳細な研究が進められている。  (遠藤秀紀・楠見 繭)