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    (最左列上から)シャクガモドキ科Hedylidae シャクガモドキの一種(Macrosoma nigrimacula)♂ セセリチョウ科Hesperiidae アオバセセリ(Choaspes benjaminii)♀ コウトウシロシタセセリ(Tagiades trebellius)♂ カラフトタカネキマダラセセリ(Carterocephalussilvicola)♂ アゲハチョウ科Papilionidae ウラギンアゲハ(Baronia brevicornis)♀ ウンナンシボリアゲハ(Bhutanitis mansfieldi)♂ シロスソビキアゲハ(Lamproptera curirus)♂ ミヤマカラスゲハ(Papilio maackii)♂
    (左2列上から)シロチョウ科Pieridae ヒメシロチョウ(Leptidea amurensis)♂ スジボソヤマキチョウ(Gonepteryx aspasia)♂ カワカミシロチョウ(Appias albina)♂ シジミチョウ科Lycaenidae フィロタキララシジミ(Poritia philota)♂ ベニシジミ(Lycaena phlaeas)♀ テイオウシジミ(Neomyrina nivea)♂ ルリウラナミシジミ(Jamides bochus)♂ ホリイコシジミ(Zizula hylax)♂ ウラギンシジミ(Curetis acuta)♂ アドニラシジミタテハ(Dodona adonira)♂
    (右2列上から)タテハチョウ科Nymphalidae シータテハ(Polygonia c-album)♂ イシガケチョウ(Cyrestis thyodamas)♂ テングチョウ(Libythea lepita)♀ リュウキュウヒメジャノメ(Mycalesis madjicosa)♀ ピロピナベニスカシジャノメ(Cithaerias pyropina)♂
    (最右列上から)タテハチョウ科Nymphalidae コノハチョウ(Kallima inachus)♂ ヘカレドクチョウ(Heliconius hecale)♂ ツマムラサキマダラ(Euploea mulciber)♂ クロコノマチョウ(Melanitis phedima)♀ カキカモルフォ(Morpho rhetenor cacica)♂

B22
蝶類の全上科・全科
翅の色彩・形の多様性

蝶類は世界から約2万種が知られ、日本にはおよそ240種が生息する。その翅は実に色彩豊かで、翅形も多様である。擬態(警告色)や隠蔽色による外敵防御、飛翔能力、配偶者選択、種分化の強化の発達等とともに、蝶は翅の色彩や形を様々な方向へと進化させてきた。特にこの色彩は、プテリン系、フラボノイド系、オモクローム系等の色素に加え、しばしば構造色により鱗粉を彩ることによる。

また、蝶類は系統学的に蛾類の一部とも見なされ、アゲハチョウ上科、セセリチョウ上科、シャクガモドキ上科からなる一群のみを蝶と呼ぶ。シャクガモドキ上科は最近までガの仲間に含まれていたが、幼生期の形態は蝶に近く、成虫にも他の蝶類によく似た特徴が見つかっている。分子系統的研究からも3上科は一群とされる。
1. シャクガモドキ上科:中南米産のシャクガモドキ科のみで構成され、小〜中型種。成虫は夜行性で、翅色は地味なものが多い。翅の基部に天敵コウモリの超音波を感知する聴覚器官がある。一般に蝶類の触角先端は棍棒状だが、本上科は糸状となる。
2. セセリチョウ上科:セセリチョウ科の1科のみで構成され、小〜中型種が占める。翅形は細長く、スキップするような動きで敏速に飛翔する。
3. アゲハチョウ上科:アゲハチョウ科、シロチョウ科、シジミチョウ科、タテハチョウ科の4科で構成される。アゲハチョウ科は一般に大型で、前翅内縁近くに本科独特の翅脈相が現れる。擬態の事例もよく知られる。シロチョウ科ではほとんどが中型種で、翅は白色や黄色の種が多く、プテリン系色素が鱗粉に含まれる。シジミチョウ科は小型種で、翅の色彩・斑紋は表裏で異なるものが多く、後翅に尾状突起を持つものも多い。タテハチョウ科は主に中〜大型種からなり、よく滑空して飛翔する。著しい地理的変異や性的二型、色彩多型、擬態、警告色など、翅の色彩・斑紋の変化に富み、擬態で知られるドクチョウやマダラチョウもこのグループである。 (矢後勝也)

参考文献 References

Kawahara, A. Y. & Breinholt, J. W. (2014) Phylogenomics provides strong evidence for relationships of butterflies and moths. Proceedings of the Royal Society B, Biological Sciences 281: 20140970.

矢後勝也(2015)「第6章・チョウにみる進化と多様化」『遺伝子から解き明かす昆虫の不思議な世界』大場裕一・大澤省三・昆虫DNA研究会(編):251–310、悠書館。