東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo
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東京大学総合研究博物館ニュース ウロボロスVolime17Number2



巻頭言
インターメディアテク待望の開館を迎える

西野嘉章 (本館館長/博物館工学・美術史学)

 2013年3月21日、東京駅前丸の内JPタワー2・3階部に、「インターメディアテク(IMT)」を開館することになった。2009年4月、東京大学総合研究博物館にIMT研究部門が創設され、以来その準備に丸四年の歳月を費やしてきた。それの集大成を一般の方々にお披露目する機会が漸くにして訪れたということである。たしかに、教育研究の拠点となる施設の完成は、われわれの準備活動の逢着点に位置する。しかし、それと同時に、今後ここで創造的な文化活動の実験を繰り広げることになるという意味では、新たな位相へ突入するための出発点の、そのスタートラインに立つことができたということに他ならない。

 「インターメディアテク」はミュージアムである。東京大学が明治10年の創学以来百三十年以上にわたって蓄積を続けてきた学術標本コレクションを、保存し、陳列し、公開するという基本的な活動において、大学博物館の範疇に属する一個のミュージアムであることは紛れもない事実だからである。しかし、だからといって、既存の施設の倣びをしたいなどとは考えない。広く国内外のミュージアム界を見渡したとき、真に実験精神溢れるミュージアムを、どこに見出すことができようか。もとより「未知」との遭遇の場であったはずのミュージアムは、見る者の心を捉えて離さぬ魅惑力、驚きという原初的感情を喚起して止まぬ衝撃力を失い、結果として、惰性的で、凡庸な鑑賞体験の場へと変質してしまった。われわれは「インターメディアテク」において、「視る」という体験の豊かさへ人々を誘い、「創る」という行為の楽しみを万人と分かち合いたい。「鑑賞の場」から「創造の場」へ、ミュージアム機能の二十一世紀的な転換を図る。その挑戦の場がいま国内外の幅広い公衆の前に開かれようとしているのである。

 旧東京中央郵便局舎の内部空間を展示・収蔵スペースに全面改修することで、いままさにオープンしようとしている「インターメディアテク」は、広く万物を集め、それらを観覧に供するという基本において、十九世紀以来の伝統的な博物陳列場のあり方に範を仰いでいる。空間のなかに一歩足を踏み入れたならすぐにも理解できようが、館内で使われている展示ケースや演示台は、その多くが戦前に東京大学の諸部局で使用されていた什器類や建築部材の再利用である。これは、われわれの手の届くところにある利用可能な蓄積資源を再活用することで、資源やエネルギーの消費をできるだけ抑制したい、あるいは抑制すべきであると考える、施設創設の基本方針に基づいている。既存の資源を現代のニーズに適うよう「リデザイン」し直すことで、審美的鑑賞にも耐える独創的な社会教育施設の立ち上げは可能である。それを実践して見せることに「インターメディアテク」の社会的意義の一端がある。ミュージアムは人間社会と不可分の文化的基盤装置である。その立ち位置にもまた、博物資源の貯蔵庫としてのそれと別な意味での、社会的意義が認められねばならないとわれわれは考える。

 東京大学に蓄積された多様な学術標本群、すなわち「東大コレクション」の常設展示をプラットフォームとして、「インターメディアテク」では各種のテンポラリーなイヴェントの実施、広範な受講生を対象とする教育プログラムの実践が計画されている。新しいものを生み出すには、未開の混沌が、その前提となる資源庫として用意されていなくてはならない。その生産力漲る混沌からなにを紡ぎ出すことができるのか、その答えを「インターメディアテク」の活動を通じて探りたいと考える。

[基本情報]
施設公式名称:JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク
プロジェクト名称:日本郵便+東京大学産学協働プロジェクトインターメディ
         アテク
内装設計監修・空間デザイン:東京大学総合研究博物館インターメディアテク
              寄付研究部門
開業日:2013年3月21日(木)
入館料:無料
所在地:東京都千代田区丸の内二丁目7番2号 JPタワー2階・3階
アクセス:JR東京駅・東京メトロ丸の内線東京駅丸の内地下通路からJPタワー
     直結
ウェブサイト:www.intermediatheque.jp


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