東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo
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東京大学総合研究博物館ニュース ウロボロスVolime14Number1



The readiness is all.―Hamlet: Act V, Scene 2.
共同制作展示『南太平洋80s −文化再生産の現場』によせて

藤尾直史 (本館助教/建築史学)

 2006年以来4回へわたって小学生とその親を対象として展示の見学会を行ってきた。本年は8月22日(土)23日(日)の2日間で計48組の親子にお越しいただいた。
 この種の話を始めると必ずといってよいほど出てくるのが同種のイベントについての話でこの点は過去のカレンダーなどからも明らかであるがそれらの意図はともかくとして、本イベントはそもそもの発端は子ども霞が関見学デーの一環として何かやりませんかと声をかけていただいたことによるものでその後それ以外にとくに特定の何かを念頭へ置いてきたわけではない。
 とはいえ一定の準備を要する点では変わりがない。毎年担当していただく方々も内容も異なっているが、基本的に問題となる点は共通性も見られる。たとえばここではこれをお勉強しましょう、ここではこれをお勉強しましょう、そしてここで感動しましょう、というようなチャート式の展示でもなければ、逆にはなから文脈シフトありきというようなものでもない。内容によってはお話しできることがいくらでもあるものの、どの程度のペースでということが当然ながら問題となってくる。ただただ小学生目線で面白そうなものをということでもないであろうし、長い目で見てこのようなことへ取組んでおけばというあたりがひとつの目安となってくるのではないか。
 たとえば毎年行ってきたもののひとつに動物の骨へ触れてみようというものがある。身近な(というより身そのものというべきかもしれないが)骨の意義について再確認していただこうというものであるが、骨に限らず何であれ2つの似たものがあって両者が似ているのは偶然か必然かということはさまざまな分野において問題となる点である。答案はともかく2点の古文書や文献資料というようにテクストということも当然ある。
 ほかにも機械式計算機を使って実際に計算をしてみようというものがある。計算の意義は日々実感しているところであろうし、機械一般についてはさまざまなキットが市販されているからその気になれば筆者自身の経験からしても相当なものを製作できるはずだが、計算機といえば通常は電卓であろうから手回し式の計算機はやはり珍しいものであろう。
 そのような珍しいものが使いこなせるようになったということでとりあえずはよいのであるが、なぜ答えが出るか、さらにはその答えがわかったところでそこから何を学んでいただくかとなるといろいろと考える余地はある。
 ちなみに冒頭で建物の紹介ということも行ってきた。どちらかというと前振り的な位置づけのもので、グーグルアースの地球の画像からスタートして、都市的スケールで見た建物の寿命、時代的背景の2点へふれてから、形態の変遷、場所の変遷、用途の変遷を経て、1階展示室の地球儀の画像で実際にそちらへ移っていただくというようなものである。
 寿命ということのほうが古いということよりもわかりやすいのではないかということであえてそのような説明をしている。物理的寿命よりも経済的寿命が優先されるとどうなるか、文化財指定は単なる格付けではなくて本来このあたりと関わってくることなのだがいきなりだと難しいかもしれない。
 小学生のとき上級生とドッジボールの試合があって、圧倒的な体格差の割に善戦していたが、とくに粘っていた一人が至近距離から顔面へ当てられて、そこから一気に試合が終わってしまった。試合後あれは手が滑ったとかではなくて、明らかに顔面をねらって当てたもので、しかも薄ら笑いで当てていたことがわかった。結果的にこのようなことが容認されてしまっているところも現にあろうが、このときはその上級生を校庭へ担任と同級生全員で呼出し、後日その担任が校長室へ呼ばれるようなことともなった。別の日に同じ担任が車椅子の方を駅までお送りするから手伝うようにとのことでついていったのであるが、そのとき毎日歩いている通学路がいかに凹凸に満ちたものであったかはじめて実感したのを今でもよく覚えている。
 何事につけ物事をとらえるということは容易なことではない。それらしくてもそうでないという例はいくらでもあるし、逆に何ということもないところへ本質が潜んでいたりもするのであるが、広くそのようなことを念頭へ置いた取組みはいつからでも早過ぎるということはないし、少しでもそのあたりが全体を通して伝わればあるいは伝えていただければと考えている。
 各回の定員の都合上参加をお断りせざるを得なかった方々へこの場を借りてお詫び申し上げるとともに、当日ご来館いただいた方々、また当日も含め日頃からご対応いただいている学生ボランティアの方々、とりまとめをしていただいている職員の上野恵理子さんにあらためて謝意を表しておきたい。



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