シンポジウムのご案内
  「動物園と野生下での動物遺体・生体研究」

遠藤秀紀(東京大学総合研究博物館)
 「遺体科学研究会の発展に向けて:
      円熟期へ向かう動物園動物遺体の研究体制

遺体科学の基礎的な活動である動物園遺体の収集と研究の体制が確かな実績を積むようになってきた。園の人々とともに社会教育と研究を盛り上げるという姿勢 は、行革華やかな現在では逆風が吹いているのであるが、築いてきた人と人の信頼は、多くの動物園とともに最新の研究成果を分かち合い、園の社会教育に貢献 するという大きな結果に結びつきつつある。

樽 創(神奈川県立生命の星・地球博物館)
 「動物園遺体の研究実績:生命の星・地球博物館における実績」
博物館の機能のイメージは、標本の保管であろう。しかし、実は標本を使った新発見の場でもある。神奈川県立生命の星・地球博物館では、動物園から検体を受 け、標本として保管を進めている。そして、標本化の過程で検体から得られる情報を、研究に利用したいと希望する研究者、学生に提供してきた。そこから生み出されるアイデアは、第一線の研究として公表されている。検体からうまれた当館での活動の実践を紹介する。

森角興起(横浜市金沢動物園)
 「糞も捨ててはモッタイナイ
    −野生動物飼育と研究:横浜を例にして−」

野生動物の保全を行う上で、メスの発情周期を把握することは、自然繁殖の成功や先進的な家畜の人工繁殖技術の応用に欠かせない基礎的条件である。そのため、 対象種のホルモン測定を行う必要があるが、家畜のように頻繁に採血を行うことは困難である。そこで、動物たちの生命の証として毎日確実に排泄される糞を 用いたストレスレスで簡便なホルモンの測定方法が研究され、実用化されつつある。横浜市でも、1999年から横浜市繁殖センターが中心となり野毛山、金沢、ズーラシアの市立3動物園と共同して研究を進めてきた。

姉崎智子(群馬県立自然史博物館)
 「野生動物の生きていた証拠を残す in 群馬県」
群馬県立自然史博物館には、様々な由来の動物たちの検体が搬入される。博物館では多くの方々の協力を得て、これらの動物たちがどのような自然環境で生きていたのか、解剖、分析を行い、その証拠(標本)と記録を残し続けている。現在、積み重ねられた情報・資料は、博物館の教育普及や、ヒトと野生動物の営みを守る県行政施策にも生かされ重要な役割を果たしている。現場のニーズに応えるとともに、動物たちが生きた証拠を残し、未来に伝えていく活動は、少しずつ軌道に乗りつつある。






浜 夏樹(神戸市立王子動物園)
 「動物園と遺体科学」

「動物園=生体の展示」これが動物園の公式です。しかし生あるものすべてに死があります。王子動物園は園内に「動物科学資料館」を配し、園内で死亡した動物の 剥製や骨格標本を展示するという博物館的技法での教育活動も行ってきました。現在はそこからさらに進んで、博物館や大学の遺体科学研究者と連携し、教 育的側面のみならず研究的側面にも遺体を活用し、生体からのみならず遺体からも動物に関するより多くの「知識」の積み重ねてを行っています。 

川田伸一郎(国立科学博物館)
 「野生動物の生きていた証拠を残す in 愛知県」
哺乳類の標本収集は大変だ。現在では狩猟法が整備されたために、自由にモグラやネズミすら捕獲してはいけない状況になってしまった。標本を一つ作るのにも、 かなりの労力が必要とされる。それでも標本はその動物の生きてきた記録として大切だ。そこで何とか効率よく、多くの標本を入手するために、色々なことを やってきた。本発表でお話しするのは、僕が大学院在籍時代に行ってきた標本収集に関する苦労話である。駆除されたものや、不慮の事故で死亡した個体から、 どれくらいの貴重な標本を集められるかに挑戦した、一研究室の活動である。キーワードは、「無目的」「無制限」「無計画」、そして「もったいない」だ。 

本郷一美(総合研究大学院大学)
 「考古学と現生動物遺体研究」

動物考古学の研究においては、現生の動物遺体の標本の蓄積が不可欠である。遺跡から出土した動物骨破片の種同定を正確に行うためには、さまざまな年齢の現生骨格標本と比較することが必要であるだけでなく、骨端の癒合や歯の萌出と摩耗の程度にもとづく死亡年齢の推定、地理的な体サイズ変異などについて、現生の動物のデータを蓄積しなければならない。これら現生データがあって初めて、過去の人々が生業活動の中でどのように動物を利用したかを詳しく明らかにすることができるのである。

佐々木基樹(帯広畜産大学家畜解剖学研究室)
 「動物形態の多様性」
地球上ではさまざまな動物がその生息環境に適応しながら進化を続けてきた。そのような適応進化の過程で獲得された形態学的特徴は多種多様であり、その「かた ち」のもつ機能的意義を理解することは、進化の歴史をひも解く一つの鍵となる。そして、壮大な「進化」という余白だらけの大著を埋めるために、人類に系 統だった研究の場を提供してくれているところが動物園や水族館である。今回、研究を通して動物園や水族館の価値を再確認していきたい。

総合討論




<休憩>
15:15−15:30
14:30−14:45
13:35−13:55
15:00−15:15
13:55−14:10
13:20−13:35
15:40−適宜終了
14:45−15:00

日時:2月7日(日) 13:00〜16:00くらい
場所:東京大学総合研究博物館1階講義室
内容:

 

入場無料、事前申し込み不要


「命の認識」特別展を機に、動物園や博物館、大学で行われている、動物遺体の研究、また野生動物を追う仕事などを、まとめて紹介してみたいと思いま す。人と人が集うなかで、たとえば死体が第二の生涯を歩み、またあらたな動物の知に結びついていく、そんな現場からのメッセージをお伝えしましょう。以下 が演題と時間割です。

13:05−13:20