番外編 遺体科学のいま |
「遺体科学とは?」 ![]()
遺体科学は、遺体研究の新しい体系です。ナチュラルヒストリーや比較解剖学、古生物学、育種学などに見られる、総合性と継承性とを重んじる科学哲学を出発点にしています。遺体に謎を問いかけ、遺体から真実を解き明かし、遺体を未来に引きついで、人類の知に貢献することを考えています。
「どんな遺体も宝物です」
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遺体科学は、「あの遺体は欲しいけれど、この遺体は研究しないので要りません」という目的化した選別に、遺体を曝すことはありません。どんな遺体も知の宝庫だと信じ、目の前の遺体が秘めている謎に、学者の能力を懸けて挑戦します。日々、遺体の収集を進め、遺体を学界に広め、あらゆる手法をもって研究に取り組んでいます。標本であれゲノムであれ、大事な遺体を、アカデミズムが自由に研究・教育に使うことができるように、現実の障害と闘っていきます。
「遺体と社会の幸福を追い求めます」
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遺体科学は、動物園、博物館、猟師さん、飼育者といった、遺体に接する人々の幸福を、何よりも大切にします。遺体を学術の最前線に導き、社会教育、狩猟、畜産、自然誌などの、旧来日本のアカデミズムが重視しなかった遺体の現場が、文化の基礎として発展していくように力を尽くします。
以下に遺体科学を支える勇気ある人々の仕事ぶりを書いておきましょう。 東京 東京大学総合研究博物館 遠藤秀紀 帯広 帯広畜産大学獣医解剖学教室 佐々木基樹さん 小田原 神奈川県立生命の星・地球博物館 樽 創さん ソウル ソウル国立大学獣医学部 木村順平さん 東京 国立科学博物館動物研究部 川田伸一郎さん 設楽 名古屋大学 生命農学研究科 山地施設 |
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ラッコの解剖です。腹部から作業を開始しています。このときの狙いは四肢の形の記録でした。
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キリンの遺体を運んできました。いまから筋肉の解剖を始めます。最後は骨にして永久収蔵。
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パリの植物園で。私の尊敬する解剖学者、キュビエの像です。日本では比較解剖学者が賞賛されるような文化は、残念ながらまだ育っていません。
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これからゾウの遺体を埋めて骨を作ります。体重は5トン以上。並んでいるのは肋骨です。
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京都大学霊長研の収蔵庫です。5000点を優に超えるサルの骨を大事に未来へ引き継いでいます。写真に見える青い箱には、ニホンザルの全身骨格が入っています。
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マダガスカルでの共同研究の一こま。収集した動物のアルコール液浸標本を、現地の大学に残しています。標本は、研究や教育に自由に使われるべき、全人類共有の宝物です。
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