「イマジネーションミュージアム ― 知のカレイドスコープ」展 | 東京都美術館 牟田行秀 |
「POINT OF VIEW」展 | 福島県立博物館 笹川英俊 |
「博物標本とアートの境界線はどこにあるか ―博物標本vs.アート」展 | 女子美術大学美術館 山田直子 |
「どこかに行きたい!−「移動」が生み出す「かたち」」展 | 岐阜県博物館 守屋靖裕 |
「標本の世界 Structure of Representation」展 | 南山大学人類学博物館 木田歩 |
「イリュージョン―物質の近代」展 | 辰野美術館 赤羽義洋 |
「模型の表現――写実と実用からの創造」展 | 山形県立博物館 吉田哉 |
展示企画構想意図
ミュージアムの既成概念である「知を伝達する場」から脱却し、来館者が自由な発想で資料に触れ、インスピレーションとイマジネーションを掻き立てられるような体験を提供する。与えられる情報により、いかに資料を観察する視点が操作され、限定されているかということを体験を通して学び、自ら考えたり推測することの意味や楽しさを知ってもらうことを狙いとする。
いかに日頃受身的に情報を捉えているかを体感し、様々な視点から積極的に働きかけて資料を見るということの知的興奮や、知を創造する楽しさを味わって欲しい。
展示構成にあたっての課題
資料を様々なメディウム(媒材)を用いて、視点ごとに異なった印象を与えることができないか?
限られた資料を有効に用いつつ、展示にドライブ感を持たせることができないか?
展示空間の構成
建物の平面プランは14m×14mの敷地内に建てられた正六角形の構造物
内部壁面は円形プランにより構成(外観と内部空間の違いで来館者に軽い違和感を覚えさせる)
入場は一人または一組ずつとする
展示資料
1. ガラス製花瓶《フォルモーズ》 ルネ・ラリック H16.81cm 1924年(生産開始年) 桐箱付
2. プロペラ部品 W11×D7×H27cm 昭和期
3. 数理模型 Φ25cm H25.5cm 1880年
動線構成および概要
ライティングの変化により、来館者の視点や動線を次々にコントロールすることを基本とする
必要な空間以外は暗闇の中に隠され見ることはできない
パターン1(何も情報を与えず来館者のイマジネーションに任せる)
エントランスから入ると、暗闇の中に3つのケースが浮かび上がるように展示されている
視点1からは3つの資料がすべて目に入る(ケースと正対できる)
視点1で展示の概要を掴んだ来館者は、ライティング動線に従って視点2へと導かれる
来館者が視点2(館の中央)に立つと、正面の展示ケース以外の照明が消灯し作品が闇に溶け込む
正対している展示ケースの照明は一定の時間が経つと消灯し、次のケースが明るくなる
来館者は展示ケースの照明に従って自然にからだの向きを変え、点灯中のケースに正対する
正面、左面、右面と照明が変化することで、視線の向きにダイナミックな揺さぶりを与える
来館者は3つのケースを見終えると、ライティング動線によって外周部へと導かれる
※ このパターンでは、来館者自身に資料の特性や属性をイメージさせることをねらいとしている。
パターン2(照明器具としてのイメージを与える)
視点3に移動した来館者は、均等に照明された3つの展示ケースと正対する
中央の展示ケースの後方壁面には、キーワード「新しい照明のかたち」が表示されている
キーワード以外の情報は与えず、来館者のイマジネーションによって推測させる
視点4に移動すると、中央のケース内作品のみに強力な光線が照射される
強力な光線に照射された作品が、あたかも照明器具のように反射光を返すようなライティング
光線の色や強さが、ランダムに変化する
資料ごとに透明感やシャープさ、柔かさを想起させるようなSEがかすかに流れている
一定時間が経つと光線の照射は次の資料へと移り、来館者の視線を導く
3つの資料を見終えたところで、来館者は光によって視点5へと導かれる
※ このパターンでは、来館者に照明に関する道具という先入観念を与えることをねらいとしている。
パターン3(信仰に関する資料としてのイメージを与える)
視点5で3つのケースの概観を終えた来館者は、視点6へと導かれる
正面の展示ケースのみが点灯し、背後にキーワード「新しい祈りのかたち」が表示されている
パターン2とは対照的に、照度を落としたライティングが施されている
重々しい雰囲気のSEが流れ、時々お香がかすかに嗅覚を刺激する
資料ごとに香炉(花瓶)、霊璽(プロペラ部品)、仏像(数理模型)というキーワードが付される
来館者は既述パターンに従って3つの資料を順に観察すると、照明によりスタート地点へと導かれる
※ このパターンでは、来館者に信仰に関する道具であるとの認識を与えることをねらいとしている。
パターン4(個々の資料本来の属性を明かす)
再び視点1に戻った来館者は、明るく均質な照明のなかですべての資料を自由に観察する
ここでは個々の資料の本来の属性や名称が明かされる
この展覧会では、すべてを見終わった来館者が、次々に異なる視点や情報を与えられたことにより、混乱を来たすことを意図している。その混乱がなぜ生じたのか、次々に与えられる感覚的刺激や視覚情報によって、いかにモノを見る視点が変化するか、そしてそれがいかに容易に起り得るかを体験してもらうことにより、ミュージアムに展示された資料や付された解説は絶対ではないのだという意識を持ってもらいたい。ミュージアムを訪れる人々の視点や意識が変わっていくと、ミュージアムはもっともっと楽しくなるのではないだろうか!?
企画構想プロジェクトのトップに戻る
1.展示企画構想
1) 構想の意図
@ 今回の企画では、既存の領域や分野に固定されない展示に対する視点を、形として表現し、来館者にその意図を感じてもらう。
A 多様・解放・創造
さまざまな視点に気づく
既存の枠組みからの脱出
自分の視点を再構築する
Aのような過程をふまえ、来館者に、既存の展示に対する新たな視点を見出してもらう。
2) 具体的には、それぞれの資料が持つ情報の一面を、四曲一隻の屏風に表現し、対比させて展示する。
3) 選定標本からのテーマ展開
@多様・・・フレリトゲアメフラシ液浸標本
巻貝、進化の過程で、殻が退化
対比資料・・・巻貝の写真、イラストを整然と貼った屏風
A解放・・・数理模型(曲率一定曲面実体模型)
原則や規則性で構成、実体を外から見れば美しいオブジェ
対比資料・・・曲率をあらわす原理、法則の説明文章
数式、グラフが表現された屏風
B創造・・・若松城市全図
若松城下を南西方向から俯瞰表現を用いて描かれた屏風
対比資料・・・展示ケースは設置するが、何も展示しない。
4) ワークショップについて
期間中、以下の内容で2回開催する
@講座名:「はくぶつかんで自分のお気に入りを探そう」
対 象:小学生までの児童
A内 容: ○企画展・常設展の見学、お気に入りの選定
○どんな形式でもよいので、感想や印象を表現してもらう
○表現した成果物について話し合い、各自が理解を深める
○小グループに分かれ、作品の制作を行う
○作品を博物館内に展示し、既存の展示に異なる視点を導入する
○来館者の変化を確認する。
2 展示会場配置図 (略)
企画構想プロジェクトのトップに戻る
博物標本 | アート | |
記録する | 川原慶賀(1786-1860頃) 記録画 江戸後期の画家 (『シーボルト父子のみた日本』表紙より) |
林唯一(1895-1972) 「盆踊り(彦三頭巾) 秋田県西馬音内町」 |
模す | ドゴン族の人形 | 岡本さとみ 女子美短大卒 |
保存する | フレリトゲアメフラシ液浸標本 | 河口龍夫(1940- ) 現代美術作家 (『BOX ART』展図録より) |
1.展示コンセプト
われわれ人間自身をその学問対象としている人類学では、おそらく、人間であることの一つに「道具を持つこと」を挙げている。
博物館には、多くの標本が収蔵され、展示されている。博物館にあるもっとも当たり前の道具が、標本であろう。しかし、われわれはこれらを日々眺め、触り、包み、並べながら、これらについてほとんど知らない。
石器や土器と人間の関わりについて探求することが人類学であるとすれば、「標本」を作り使う人類、いわゆる「標本人類」について、調べることもまた可能ではないだろうか。
この展示では、大学という近代科学を営む空間に収蔵されている標本を事例に、標本そのものの誕生を含め、そもそも標本はどのようにわれわれ人間と関わりを持ってきたのかを思考したい。
2.展示物リスト
1)石器(標本番号10-33) 南山大学人類学博物館所蔵
2)数理模型
3)フレリトゲアメフラシ
企画構想プロジェクトのトップに戻る
選定基準 | 素材/構成 | インダストリー | アート | 展開 |
陶製電気式ヒーター | 陶+鉄+電気コード 接木のような構成 |
手工業 轆轤 粘土という可塑性の高い素材を器械のパーツとして使用 |
有機的 奇抜 無粋 | 展示の導入部に置き、インスタレーション的な展示とする |
プロペラ部品 | 軽量金属と鉄 | 飛行機部品 | 寡黙 洗練 ミニマム 抽象彫刻的 |
「風をつかむ」 |
数理模型 | 石膏 (チープな素材) | 数学モデル | モダン 螺旋的 | 「仕掛けをつかむ」 |
津田式体格計 | 木とエナメル | 医学測定器 平均的体格 兵役 |
シャープ | 「身体をつかむ」 |
2.展示構成
個別の展示室で構成する。
〔導入〕
陶製電気式ヒーターを中心に展示し、標本内部に光源を置き、穿孔から光が放射状にのびる。
空間全体は照明を弱くし、上部から裸電球を何本か吊るす。
標本の周辺を中心に、床には近代を象徴するレンガの残片を敷く。
生糸の繊維を中空に張り、近代のインダストリーを支えた強さと弱さを表現する。
〔風をつかむ〕
プロペラという極限的なスタイルと抽象彫刻的な形のデリケートな面を強調するために、照明を工夫する。
プロペラ標本に風を当て流し、観覧者が感じ取れるようにする。
プロペラに当てた風の音を録音して、展示室にノイズ的に流す。プロペラ機の飛行音を録ってミックスする。
〔仕掛けをつかむ〕
曲面の壁を立て、標本に横方向からの照明を当て、壁に複数方向から投影する。
壁には数理式をランダムに印字する。
〔ワークショップ コーナー〕
数理式が印字された壁で囲み、参加者が数理式の印象を紙粘土などで造形して体験する。
プロペラの印象を、竹、粘土で造形し、カーヴィング、モデリングを体験する。
〔身体をつかむ〕
入り口部分に体格計を展示し、周囲は凹凸のある壁で構成する。
標本を見た観覧者が床に引かれた体格計の目盛付のラインに沿って壁に近づいたり離れたりすると、観覧者の後方に置かれた光源によって、自分の影が曲面の壁に変化しながら歪んで映る空間をつくる。
企画構想プロジェクトのトップに戻る
1.構想意図
模型は単に写実を目的としたものだけではない。作者の学問的な裏づけを基礎としながらも、繊細な感覚や芸術的な創造性も必要となる。本展示会では、3つの模型をもとに、その作品を芸術的な感覚で鑑賞しながら、作者の意図やそれから発展するものを想像してもらうことを目的とした。
2.テーマ展開
模型とは何か。工学では、機能を表現し実用化をめざすために用いる実験的な道具である。数学では、理論を説明するため視覚によって理解させる実用的な道具である。古生物学では、実物をもとにしながらも太古の世界を表現するための写実的空想的な作品である。それらを表現するため、3つの標本「プロベラ部品」「数理模型」「ヤマガタダイカイギュウ全身骨格標本」を主展示物として、映像や参考標本を用いた展示会とする。
3.展示内容
球形の建造物。半径8m。3階の構造。
2階・3階はエレベーターでの連絡。2階・3階部分隣接施設と連絡。
メイン展示場。1,2階部分。
2階部分での鑑賞。3方向への映像照射。
○プロペラ部品 後方ではこの部品に関する風洞実験を実写し、そのほか多くの工学関係模型に関する映像を上映する
○数理模型 模型の原理やそのほかの数学関係模型などの映像
○ヤマガタダイカイギュウ ヤマガタダイカイギュウの実像やそのほか古生物関係模型に関する映像
参考標本展示場。3階部分。
映像にある模型を展示する。
4.展示物リスト
プロベラ部品 東京大学機械工学科でつくられた風洞実験用のプロペラ部品。幅11cm×奥行7cm×高さ27cm。
数理模型 ミュンヘン工科大学Aブリル博士監修。曲率一定曲面実態模型(石膏製)。ドイツ・ハーレ社製。径25cm、高さ25.5cm。
ヤマガタダイカイギュウ全身骨格標本 山形県西村山郡大江町(最上川用橋下の川床)発見。発見部位は、頭蓋骨、背骨、肋骨など上半身を中心とした69点。直系の祖先とされるジョルダンカイギュウの骨格を参考に180点の部位を復元し、全身骨格標本とした。体長3.8m。
その他 参考標本(別展示)
工学模型 数点
数学模型 数点
古生物模型 数点
5.展示会場配置図 (省略)
企画構想プロジェクト